知覚心理学に関心のある方、学びたい方に向けて資料を集めたページです


参考書
   認知・知覚心理学の学習に使える本を並べてみました。日本語の本の中で自分が読んだことのある数冊を挙げているだけです。他にも素晴らしい本はたくさんあるでしょう。また、科学的な行為といえども人間の営みですので教科書にも間違いはあり得ます。一冊の内容だけで情報を鵜呑みにしないことも大切です。国内での発売の年を表記していますので、訳書の場合は原典の発刊年がもっと前になるはずです。

全般
スタッフォード, T. ウェッブ, M. 夏目大(訳) (2005). Mind hacks: 実験で知る脳と心のシステム オライリー・ジャパン.
--一般向けの本ですが、内容は学術書に匹敵します。話題が広く、知覚だけでなく認知の内容にも触れています。良訳で読みやすく、何より、読者に思考を促す語り口が好印象です。

鈴木宏昭. (2016). 教養としての認知科学. 東京大学出版会.
--認知心理学(認知科学)全般を学べる最新の教科書と言ったらこれになるかなと。古典的な知見を近年の理論的枠組みで最新化しています。各章の冒頭部で多少つっかえるかもしれませんが、そこを過ぎれば後は読みやすいと思います。

ラマチャンドラン, V. S. ブレイクスリー, S. 山下篤子(訳) (2011). 脳のなかの幽霊 角川書店.
--どちらかというと脳科学の話ですが、知覚にも触れています。昨今では知覚心理学と脳科学の垣根はないような気がします。一般向けの本なので読みやすく、最高峰の研究者が書いているので内容も安心です。ただし一般向けの本であることに変わりはありませんので勉強のためにはもう一冊用意しておく必要があるでしょう。

鈴木光太郎. (2008). オオカミ少女はいなかった: 心理学の神話をめぐる冒険. 新曜社.
--心理学にまつわる迷信の真相を解き明かし、心理学とは何か、心理学の進むべき方向について読者に問いかけます。

視覚
大山正 (2000). 視覚心理学への招待 新心理学ライブラリ 18 サイエンス社.
--少しも妥協することのない実直な内容の教科書です。気楽に読むのは難しいかもしれませんが、独学には最適です。

グレゴリー, R. L. 近藤倫明・中溝幸夫・三浦佳世 (訳) (2001). 脳と視覚: グレゴリーの視覚心理学  ブレーン出版.
--単純に視覚を解説するだけではなく、知的探求心に溢れた一冊です。

鈴木光太郎 (1995). 動物は世界をどう見るか 新曜社.
--様々な動物の比較を通じて視覚の働きについて理解を深めます。学術書ですが、一般向けとして十分通用する言葉遣いです。

聴覚
日本音響学会 (編) (1996). 音のなんでも小事典: 脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで 講談社.
--音響全般に関する本ですが、聴覚心理学の基礎がほぼ詰まっています。学会による編著なので信頼できる内容です。ブルーバックスシリーズということで初学者の人にも安心な読みやすさです。

重野純 (2003). 音の世界の心理学 ナカニシヤ出版.
--聴覚心理学の教科書の中ではトップクラスに読みやすい教科書です。その分、内容的に研究者には物足りない部分がありますが、とっつきやすいという点では間違いなく良書です。


音の合成
   準備中


心理物理学測定法
   知覚心理学の実験は多くの場合、心理物理学の測定法に則って行われます。
   心理物理学の測定法に関しては多くの教科書において説明されていますので、ここで解説する必要はないと思います。しかし、教科書に記述してあることをそのまま該当の現象に適用すれば良いかというとそうではありません。
   心理物理実験を計画する際にはいくつか気をつけるべきことがあり、このような実践的な内容に触れている資料は多くないと思います。この点を踏まえながら古典的な心理物理学測定法(調整法、極限法、恒常法)について解説した論文を同僚の協力を得て執筆しました。
   宣伝と言われれば、はい、確かに宣伝です。でも、折角書いたしね…。
  
古典的な方法しか解説していませんので、知っている人には新鮮味のない内容かもしれません(知見は網羅したつもりですが…)。ですが、実験をする上での注意点をまとめている節は復習や確認に使えるかもしれません。
   以下のサイトからオープンアクセス(無料)で入手できます(doiの部分をクリックするとリンクします)。
   ただし、英文ですので手軽な資料とは言えないかもしれません。英語が上手かったらもっとプッシュできるのですが。

Kuroda, T, & Hasuo, E. (2014). The very first step to start psychophysical experiments. Acoustical Science & Technology, 35, 1-9. doi: 10.1250/ast.35.1

   内容を縮めて日本語で書いたものもあります。所属の研究機関がCiNiiと契約されていれば、無料で入手できるはずです。

黒田剛士・蓮尾絵美 (2013). 早わかり心理物理実験 日本音響学会誌, 69, 632-637. http://ci.nii.ac.jp/naid/110009685018


つつましく、研究
 大分前に学生から「イラレが研究室全員分ほしいんですけど」と先生に言うべきことを何故か私に要求されたことに腹を立て、10万円するソフトを「先生に買ってもらいました(エヘ)」という話を聞かされて怒髪天を衝きかけた私が研究に利用しているフリーソフトのリストです。誤解しないでほしいのですが、ほとんどのフリーソフトは使い慣れるまでに時間がかかります。市販の高価なソフトは使い慣れる時間を削減できる分が代金として反映されています。手間と時間のどちらを取るかの問題であると、私は考えています。

<音波形編集>
Praat http://www.fon.hum.uva.nl/praat/
--音の時間波形・スペクトログラムを観測するのに私は用いています。論文の図用に時間波形・スペクトログラムを画像ファイル出力できるのが便利です。

<画像作成>
Inkscape https://inkscape.org/ja/
--ベクター形式の画像編集ソフトです。イラレの代わりにはなるのですが、操作性に癖がある、解説サイトが少ない、SVGというマイナーな形式に特化していることに慣れる必要があります。

<グラフ作成>
gnuplot http://www.gnuplot.info/
--きれいなグラフを出力できますが、コマンドライン形式であるという高い壁が存在します。ですが日本語の詳しい解説サイトがありますので、使い方を習得するまでにそこまで苦労はしないはずです。SVGの出力ができますので、私はこれと上のInkscapeを利用して図を作成しています。

<実験プログラム作成>
Visual Studio Community https://www.visualstudio.com/ja-jp/products/visual-studio-express-vs.aspx
--昔はexpressというエディション名だったVisual Studioの無料配布版です。慣れていないとインストールだけで一日つぶれます。これを実験プログラムの作成に用いる際には、時間精度といった技術的な問題を一通り把握する必要があるでしょう。ここまで言っておきながらアレですが、最近ではPythonという無料言語で心理実験用モジュールが利用できるようですね。

<統計>
R https://www.r-project.org/
--別にここで紹介する必要ないくらい有名だと思いますけど。。。査読者から線形混合モデルを使おうよ→SPSS持ってない、ぎゃー!ってときに有難みを感じてしまいました。でも、「SPSSあるけど?」に対して「いや、僕Rユーザーなんで。フレキシビリティにプライオリティ感じているんで」みたいな意識高い系の発言はやめておきましょう。

<文献整理>
Mendeley https://www.mendeley.com/
文献をPDFとともに管理して、論文執筆時に引用表記や文献リストの作成を(Wordプラグインで)自動で行ってくれるソフトです。一定容量を超えるとカッキ―ンになること(ただし私が使っている限りでは当分超えることはなさそう)、個人アカウントとは言え文献のPDFをWeb上に保存することに抵抗を感じる人がいるかもしれません。

<PDF閲覧>
Foxit J-Reader https://www.foxit.co.jp/products/foxit-j-reader
アドビがどうこうっていうのは昔の話で、今は何も問題ないくらい改善されていると思いますけど、スナップショット機能がスライドを作るのに便利でついついこっちを使ってしまいます。


Q&A
   以下の質問が来たらこうやって切り返せばいいっていう自分のための覚書です。

視覚
Q 輝度と照度の違いがよくわかりません。
A 私もそうでした。この疑問は言い換えると「何で輝度と照度の両方を使う必要があるのか。照度だけではいけないのか。」になると思います。以下のサイトを見れば、その答えがわかると思います。

光と色の話 第9回 輝度の性質: 輝度の観察方向と観察距離 (シーシーエス株式会社)
http://www.ccs-inc.co.jp/s2_ps/s1/s_04/column/light_color/vol09.html


聴覚
Q 音脈分凝を最初に報告したのは誰ですか。
A 「学術的には」Miller (1947) です。音声のマスキングとやかましさ(アノイアンス)に関する研究をした中で偶然発見したようです。知名度からBregmanと勘違いしている人も多いかもしれませんが、違います。ただし、Bregmanや他の研究者が指摘している通り、バロック時代の作曲家は音脈分凝の現象を既に承知していて楽曲内に取り込んでいたようです。これが冒頭に「学術的には」と強調した理由です。

Miller, G. A. (1947). The masking of speech. Psychological Bulletin, 44, 105-129.
--この中のp. 126の第四段落において手短に述べています。

Miller, G. A., & Heise, G. A. (1950). The trill threshold. Journal of the Acoustical Society of America, 22, 637-638.
--上の後、この論文で現象をしっかりと調べていますので、こちらを引用しても良いかもしれません(原典に対する考え方によりますが)。


Q 連続聴錯覚を最初に報告したのは誰ですか。
A Miller & Licklider (1950) です。上と同じく音声の明瞭度に関する研究をした中で偶然発見したようです、ってMillerすげえ。知名度からWarrenと勘違いしている人も多いかもしれませんが、違います。

Miller, G. A., & Licklider, J. C. R. (1950). The intelligibility of interrupted speech. Journal of the Acoustical Society of America, 22, 167-173.
--この中の最後のページの最後の節で報告しています。


その他
Q 音楽と情動の関係について教えてください。
A 聴覚の研究者というとたまに音楽について聴かれることがありますが、この二つは結構離れた領域にあります。もちろん隣り合っている領域ではあるので音楽に関して私から何かお話できれば良いとは思うのですが、責任をもつのは難しくなります。というわけで上の質問に対して私から解説できることはありません。すみません。しかし、以下の論文が最近のものとしてはかなり参考になるのではないでしょうか。

大村英史他 (2013). 音楽情動研究の動向: 歴史・計測・理論の視点から 日本音響学会誌, 69, 467-478. http://ci.nii.ac.jp/naid/110009660400


Q 心理物理とか統計とか文系の私にはわけわかめです。
A 結論から言うと今は無理しなくてよいと思います。スッカラカンじゃない程度に最低限の勉強をすれば良いと私は思います。
 誰にも得手不得手はあり、全教科が得意というのは稀でしょう。ですが、自分は文系だから理系科目はダメのように、自分の能力に自分から制限をかけるのはもったいないことだと思います。もちろん、これは人生観の問題であり、押しつけられる考えではありません。
 また、苦手なものを無理して勉強しても伸びないのは確かです。ですので、「何々を研究したい」といった明確な目的ができる前は、自分の好きな事柄に専念すれば良いでしょう。学問に限らず何かに打ち込んでいればいずれ目的ができます。すると、苦手なものに取り組むだけの心の余裕や度量が生まれます。結局は好きなテーマを見つけるのが先ということです。



Q 本を読むのが好きになれません。
A 私もそうでした。今もそこまで本が好きというわけではありません。まずはラノベでも何でも良いので自分が好きになれそうと思う本を読むのが大事です。ここで無理をして海外文学などに手を出すと面白さがわからず挫折して、本離れが進みます。とりあえず何でも良いので一冊読み終えましょう。そうすれば自信がついて本が身近に感じられます。次も無理をせず自分が読みたいと思える本を選んでいきましょう。


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