奥行き知覚


大気遠近(2014/11/04掲載)(2015/06/08説明文訂正)

-解説-
空気遠近ともいう。山の連なる風景では、遠くの山ほど大気の影響でかすんで、かつ青みがかって見える。

この「遠くのものほどかすんで青みがかって見える」ことが知覚系において二次元網膜像から三次元表象(奥行き)を作り出すための手がかりとして用いられる。
実際の絵画でも奥行き表現の手法として利用される。


下の画像のうち両脇にある山はどちらも同じ奥行きの位置にあるように見える。

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しかし、ぼかしを加えると、ぼかしの強い右の山の方が奥にあるように見える。

aerial2


同じ程度のぼかしでは両脇の山のどちらも同じ奥行きの位置にあるように見える。

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しかし、以下のように色をつけると背景の色に近い(青みがかって見える)左の山の方が遠くに見える。

aerial4


「青みがかって」と先に述べたが、青に限らず背景となる大気の色と似通っていればよい(これは教科書的知識というより私的な見解)。
したがって夕焼け空でも背景の色に近い左の山の方が遠くに見える。

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コメント:これを作っといて言うのもアレですが、大気遠近の説明でhttp://zokeifile.musabi.ac.jp/?p=2476にかなうものはないような気がします。この手の話で画家にかなうと思ったら、それこそ錯覚だ!



陰影(2014/05/13掲載)(2015/06/08説明文訂正)

-解説-
通常の生活では太陽などの光は上から降り注ぐ。このとき、壁から出っ張ったものは上の方が光を受けて明るく見え、下の方に影が差す。引っ込んだものは下の方が光を受け、上の方に影が差す。以下の図においては、明るい領域が上の方にある円や長方形が自分の方に突き出ているように見え、明るい領域が下の方にある円や長方形がへこんでいるように見える。このように、光と影のつき方によって奥行きの見え方が変わる。この図を印刷して180°回転させると、明るい領域が上か下かの関係が逆転するので、出っ張っていたものがへこんで見え、へこんでいたものが出っ張って見えるようになる。

陰影1

陰影2

コメント:これは効果が鮮やかに出て、作るのが簡単なのでお得感たっぷりです。



風変わりな贈り物(2014/11/04掲載)

ぼくの おじさんは とおくのくにへ りょこうに いくのが だいすき
こんかいも いこくのしまから おみやげを おくってきて くれたよ

ふしぎな もようだね
どちらも うえから ひかりが あたっているよ
ひだりは もようが でっぱって
みぎは もようが へこんで みえるよ

gifts1



つぎは ひとのかおだね
ひだりは うえから ひかりが あたって
みぎは したから ひかりが あたってみえるよ

あれ?
でも なんで さっきは りょうほうとも うえから ひかりが あたって みえたのに
こんどは みぎだけ ひかりが したから あたって みえるのかな?

gifts2



-解説-
「光が上から降り注ぐ」ことだけが凹凸の知覚の手がかりになるわけではない。
aのでっぱって見える模様を顔の形に並び替えたのがa'である。
同じくbのへこんで見える模様を顔の形に並び替えたのがb'である。
どちらも楕円背景に変更は加えていない(上部の方が常に明るい)。

光が上から降り注ぐという前提に立つため、aのように模様の各パーツの上半分の領域が明るい場合にはでっぱって見え、逆に下半分の領域が明るい場合にはへこんで見える。

しかしヒトの顔、特に鼻や眼の付近がへこんでいることは自然界ではほぼない。
そのためbではへこんで見えていた模様が、b'のように鼻や眼に相当する位置に配置される時にはでっぱって見えやすい。
注意の仕方によっては、光が上から当たっているものとして鼻や眼の部分をへこんでいるように見ることも可能であるが、光が下から当たっているように見る方が自然ということには了解が得られるはずである。

顔の認識それ自体が凹凸の知覚の手がかりになることは、Gregory (1998) のEye and brain: The psychology of seeingにおいて言及されている(お面を裏返した写真を用いている)。ただし、該当の文中では他の研究者の名前の引用もあり、原典の情報は定かではない(調査中)。

コメント:この効果を何とか絵で上手く表現できないかなーと考えていたときに、パプアニューギニアの芸術を見る機会があって、このデモが湧いてきました。


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